ホ、ホ、ホリョ

ヘルパーの仕事を始めた頃、週に何度も訪問していたUさん。

朝も夕も一緒になっちゃってたけれども、メガネをかけて新聞を広げる(広げるだけ)時は眼光鋭く威厳があった。


爪を切りながら中指が少し曲がってることを尋ねるとやっとこさ答えてくれた。

「ホ、ホ、ホリョ」

シベリアに連れていかれたの?

「うん」


Uさんはそういう経験を誰にも話してないように思う。

なんとなくそんな気がする。