無題

お盆だというのに実家に供花も送っていなかった。

お母さん、ごめん。

お父さんこっちに戻って来てますか?

お父さんが亡くなった時、私は何も出来なかった。

手を握ることも目を見て話しかけることも難しかった。

今なら何でも出来るんだけどなぁ。

ホ、ホ、ホリョ

ヘルパーの仕事を始めた頃、週に何度も訪問していたUさん。

朝も夕も一緒になっちゃってたけれども、メガネをかけて新聞を広げる(広げるだけ)時は眼光鋭く威厳があった。


爪を切りながら中指が少し曲がってることを尋ねるとやっとこさ答えてくれた。

「ホ、ホ、ホリョ」

シベリアに連れていかれたの?

「うん」


Uさんはそういう経験を誰にも話してないように思う。

なんとなくそんな気がする。


退室のタイミング

昼ご飯を準備🥢


ご飯とみそ汁、豚肉とアスパラを炒める。

デザートにスイカをカット🍉

ここからのタイミングが難しい。


サービス終了して帰る時が一番気をつかう。


先生がお箸を止めて私に頭を下げる。

私も頭を下げる。


独り暮らしの福徳先生はもともと賑やか好きなんだろう。淋しいのだ。

涙ぐみながら「また来てくださいね」と何度も何度も言う。

私はなるべく大げさな笑顔で、手を振ってまた戻って手を振って。


やっと退室🚲